いつでも本気で徐行運転。
原稿に疲れたので、気分転換の小話。
「夜桜」と「あまおう~」に拍手下さった方々、どうもありがとうございました。
どっちも”一緒に帰ろう”ってネタだったのに、今気付きました(^^;)
「夜桜」と「あまおう~」に拍手下さった方々、どうもありがとうございました。
どっちも”一緒に帰ろう”ってネタだったのに、今気付きました(^^;)
「・・・こっ、これは!!!」
健二はゴクリと喉を鳴らした。
目の前に有るのは、艶やかな紅い魅惑の輝き。
馨しく立ち昇る芳醇な香り。
誘うように熟れた完璧なフォルム。
健二は無意識のうちに震える手を伸ばした。
『とちおとめ¥280』
それだけでも驚愕に値するのに、更に。
『タイムセール50円引き』
健二の目の前で、店員によって透明フィルムの上に誇らしげに貼られた、
そのシール。
「・・・とちおとめ・・・税込・・230えん・・・・・・だとぅっ?!!!!」
健二の脳裏に、先日苺ジャムを佳主馬と一緒に作った光景が浮かぶ。
狭いキッチンに二人でぎゅうぎゅうに並んで作った工程はとても楽しく、
何でも出来る器用な佳主馬君に感心しきりだった。
佐久間に話したら『新婚か!』と白い眼で見られたが、そんな事は
どうでも良い。
ジャムはとても美味しく、そのジャムは今朝尽きた。
(1パックに入った総量、一粒当たりの単価・・・4等分に切り分けた場合の
砂糖の配合、器の大きさに見合った苺の配列とレンジの熱量と加熱時間、
結果増える水分量と・・・・導き出される総体積・・・・)
健二はカッと目を見開いた。
「―――いける」
佳主馬君に習ったレシピは暗記している。伊達に二人の共同作業を何度も
脳内で反芻していない。
佐久間にキモイと言われたが、瑣末な事だ。
健二の手がパックを掴もうとした、その瞬間―――。
スカッ。
手が空を切った。
「あ、あれ??」
ならば、その隣の・・・やはり健二が伸ばした手は何も掴めなかった。
「え、ええ??!!」
横から誰かに掻っ攫われたたのだと気付き、顔を上げた健二は見た。
目を爛々と輝かせて、自分・・・では無く、苺売り場に殺到する人だかり。
「うわわっわわわ~~~~?!」
「ちょっと邪魔よ!!」
「どきなさいよ」
タイムセールに群がる主婦と言う名の猛牛の群れに、か弱い子リス如きが
敵う訳がない。
あれよあれよと言う間に弾き飛ばされ、茫然とする間にタイムセールの
50円引きとちおとめの山は無くなっていた。
そりゃもう、1パックも残っていなかった。
「・・・佳主馬君と、僕の・・・苺ジャムがぁ・・・・・・」
目の前でシールが貼られた瞬間、すぐにゲットしておけば良かったと
嘆いても後の祭りである。
項垂れる健二の背後から、にゅと無骨な手が伸びた。
「・・・?」
タイムセール品とは別の苺パックに一つだけ、ぺたり、と貼られた
50円引きのシール。
「・・・なっ」
慌てて振り返れば、無言で去って行く青果店のおじさんの後ろ姿。
無様な健二を哀れんでくれたのだろう、その気使いに感動しながら
シールを貼られたパックを振り返る。
『高級あまおう3L¥700 50円引き』
「・・・・・・・・・・・・・・・」
健二は想い出だけを糧に家路に付いた。
おわり
いつも寄るお店のタイムセールでゲットしました。50円引きとちおとめ。
ちょっとくたびれ気味でしたが、その分とっても甘くて満足~。
健二はゴクリと喉を鳴らした。
目の前に有るのは、艶やかな紅い魅惑の輝き。
馨しく立ち昇る芳醇な香り。
誘うように熟れた完璧なフォルム。
健二は無意識のうちに震える手を伸ばした。
『とちおとめ¥280』
それだけでも驚愕に値するのに、更に。
『タイムセール50円引き』
健二の目の前で、店員によって透明フィルムの上に誇らしげに貼られた、
そのシール。
「・・・とちおとめ・・・税込・・230えん・・・・・・だとぅっ?!!!!」
健二の脳裏に、先日苺ジャムを佳主馬と一緒に作った光景が浮かぶ。
狭いキッチンに二人でぎゅうぎゅうに並んで作った工程はとても楽しく、
何でも出来る器用な佳主馬君に感心しきりだった。
佐久間に話したら『新婚か!』と白い眼で見られたが、そんな事は
どうでも良い。
ジャムはとても美味しく、そのジャムは今朝尽きた。
(1パックに入った総量、一粒当たりの単価・・・4等分に切り分けた場合の
砂糖の配合、器の大きさに見合った苺の配列とレンジの熱量と加熱時間、
結果増える水分量と・・・・導き出される総体積・・・・)
健二はカッと目を見開いた。
「―――いける」
佳主馬君に習ったレシピは暗記している。伊達に二人の共同作業を何度も
脳内で反芻していない。
佐久間にキモイと言われたが、瑣末な事だ。
健二の手がパックを掴もうとした、その瞬間―――。
スカッ。
手が空を切った。
「あ、あれ??」
ならば、その隣の・・・やはり健二が伸ばした手は何も掴めなかった。
「え、ええ??!!」
横から誰かに掻っ攫われたたのだと気付き、顔を上げた健二は見た。
目を爛々と輝かせて、自分・・・では無く、苺売り場に殺到する人だかり。
「うわわっわわわ~~~~?!」
「ちょっと邪魔よ!!」
「どきなさいよ」
タイムセールに群がる主婦と言う名の猛牛の群れに、か弱い子リス如きが
敵う訳がない。
あれよあれよと言う間に弾き飛ばされ、茫然とする間にタイムセールの
50円引きとちおとめの山は無くなっていた。
そりゃもう、1パックも残っていなかった。
「・・・佳主馬君と、僕の・・・苺ジャムがぁ・・・・・・」
目の前でシールが貼られた瞬間、すぐにゲットしておけば良かったと
嘆いても後の祭りである。
項垂れる健二の背後から、にゅと無骨な手が伸びた。
「・・・?」
タイムセール品とは別の苺パックに一つだけ、ぺたり、と貼られた
50円引きのシール。
「・・・なっ」
慌てて振り返れば、無言で去って行く青果店のおじさんの後ろ姿。
無様な健二を哀れんでくれたのだろう、その気使いに感動しながら
シールを貼られたパックを振り返る。
『高級あまおう3L
「・・・・・・・・・・・・・・・」
健二は想い出だけを糧に家路に付いた。
おわり
いつも寄るお店のタイムセールでゲットしました。50円引きとちおとめ。
ちょっとくたびれ気味でしたが、その分とっても甘くて満足~。
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ついったもぴくしぶもしない無精者。
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